再エネ、災害に強く <蓄電池活躍 風圧・漏電対策も>

2018年11月06日(火)1:54 PM

2018年に日本を襲った豪雨や地震は、太陽光や風など自然の力で電気を起こす再生可能エネルギーの脆弱さを浮き彫りにした。化石燃料の消費を抑え核廃棄物が発生する問題もなく、期待は大きい。災害への耐久性を高めなければ、主力の電源として信頼は得られない。技術的な課題ははっきりしてきた。定着に向けて力を注ぐときだ。

西日本を中心に200人を超える死者を出した7月の記録的な豪雨。河川の氾濫や土砂災害などが起き、太陽光パネルの被災も多発した。岡山県や広島県などで出力50キロワット以上の大規模太陽光発電所の約20カ所が国に被害を届け出た。報告の義務がない50キロワット未満の事業用太陽光についても、推定で200件超が被害を受けたとみられる。

8月には強烈な風をもたらした台風20号の影響で、兵庫県淡路市に建てられた高さ37メートルの風力発電施設が根元から折れた。施工に不備がなかったかなど原因を調査中だ。

再生エネルギーの電気を電力会社が買い取る制度(FIT)が2012年に始まってから、新たに発電を始めた設備は小規模な太陽光発電を中心に急増した。計4000万キロワット超に達し、16年には水力も含め再生エネルギーは発電量全体の約15%を占めた。

この7月に決まった国の新しいエネルギー基本計画は、再生エネルギーを主力の電源にしていく方針を打ち出した。30年に22~24%まで拡大する目標を掲げた。達成するためには、自然災害に強い電源にする必要がある。

経済産業省は今年、太陽光パネルの風に対する耐久性の基準を引き上げた。風の強さや周辺にある構造物などの条件によって従来の2倍以上の風圧に耐える設計を求めた。

また10月には、最近の災害で太陽光発電の被害が相次いだことを受け、規制を強化する案を公表した。基準を守らない事業用太陽光施設に立ち入り検査などを実施し、事業認定の取り消しも視野に入れている。建設を急ぐあまり、一部で施工不良や地域住民とのトラブルなどがみられることが背景にある。

壊れた施設で感電しないなど、二次災害を防ぐ活動も出始めた。太陽光発電協会などは太陽光パネルが水害を受けたときの注意事項などを整理した報告書を今年度中にまとめる。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)と協力してパネルを池に沈め、わざと漏電を起こす実験を通じて安全対策に見落としがないようにする。

安定して電気を供給することも、再生エネルギーにとって重要な課題だ。

電力網では発電する量と消費する量のバランスをうまく取らないと停電してしまう。9月に北海道で起きた地震に伴う大規模な停電は記憶に新しい。震源近くの火力発電所が停止したため、供給量が一気に落ち込んで発生した。

火力発電所の復活などで電力供給は2日後、ほぼ全域で戻った。このとき再生エネルギーも電力供給に貢献できるのではと期待が膨らんだが、大半が電力系統につながるまでに約1週間かかった。太陽光や風力の発電量は日照時間などの自然条件に左右されやすく不安定だ。「病み上がり」の電力網につなげると、再び停電に陥るリスクが高まると敬遠されたためだ。

不安定な出力でも、使いこなす方法はある。北海道で一役買ったのは蓄電池だった。震災翌日、北海道電力は変電所に設置していた容量6万キロワット時の蓄電池を動かし、一部の風力発電をつなげられたという。東京大学の荻本和彦特任教授は「再生エネルギーに変動を抑える調整力をもたせ、頼りがいのある電源にする必要がある」と解説する。

ただここにも課題がある。一つはコストだ。今回活躍した蓄電池も経産省が200億円近い予算を投じた実証実験用だった。安全性に優れ寿命の長い蓄電池がいろいろ開発されてきたが、広く導入するためには安価な蓄電池が欠かせない。

電気自動車なども含めて域内の様々な電源を電力網とつなげ、まとめて制御する構想も有望だ。需要と供給の全体像を常時監視し制御するためには、センシング技術や新たなソフトウエアも必要で、これからさらに研究を積み重ねなければいけない。

FITの認定が切れる太陽光発電は19年から出始める。売電収入が得られなくなり、運転を止める設備が出てくる対策も考える必要がありそうだ。厳しい規制だけでは再生エネルギーを主力の電源へと育てる道は険しい。国が定着に向けた青写真を描き、産業界や地域社会などが一体となって実現に向かう時期に来ている。

                                (2018/11/4付 日本経済新聞より)

 

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